【事例紹介】内斜視とプリズム眼鏡
こんばんは! プラオプ ハセガワです。
「ゲーム用メガネを考える」連載がほったらかしですいません。
今日は先日お渡しした「内斜視」に対応したプリズム眼鏡の事例紹介です。
「内斜視」とは片方の目が常に内側を向いている状態。「抑制」といって片目のスイッチを切る事ができたら脳に映る外界の映像は一つに見え視界に混乱は起きません。
しかし、両眼を使った広い視界と世界を三次元の立体空間と感じる能力は不完全になり能力を活かせなかったり、生活で不具合がでてしまうでしょう。
しかしM様は抑制が起きずにいるので、常に視界がダブっている状態。それはさぞかし大変な思いをされていることでしょう。
外斜視という目が外に向く状態とは違い、近視+内斜視は近くを見た時のように寄り目をしてみるような場面では両眼で一つに見る事ができる事があるので「抑制」という状態が起きにくいように思います(あくまで僕の主観です)
その分だけ常に視界のダブりに悩まされる・・・
病的な原因も当然考えられますから医師の診察や処置が必要な事ですが、M様は10年それに悩まされ続けているそうです。
根本的な解決が将来望めるとしても、今の現状を少しでも改善できるなら・・・作った眼鏡でそれを少しでも改善する事ができたとして根本的な解決ができた時に眼鏡が不要になるとしてもいい・・・という条件で、お力になれる眼鏡が作成できるか一緒に考える事にしました。
結果は1m先で16.5cm視線を外側に曲げるプリズム度数を眼鏡に組み込む事で「両眼でのダブり」がなくなり、しかも精密な立体感も獲得する事ができました。
単に測定数値を入れ込むだけではレンズはその性能を発揮しません。視線の移動とそれに伴う度数のズレを計算し、正しい位置にレンズをセットしなれば単に「数字があっているだけ」の眼鏡になってしまい、「視覚を整える」眼鏡には正確にはならないからです。
そして近視のレンズは中心から外側に向かって厚くなります。それに内斜視に対応したプリズム度数を組み込むとレンズの外側は大変厚くなってしまいます。
また強いプリズム度数は制作できるレンズも限られ、さらにフレームに正確に組み込むにも高度な技術が必要になります。
近視と乱視、それにプリズム度数の組み合わさった複雑なレンズであっても、広い視界と鮮明さを得る為に選んだレンズは「ZEISS SmartLife SingleVision」です。
これはそのような複雑な度数においても眼鏡として使用する部分のレンズを約40,000箇所に分割して設計し、最大の効果を狙う事ができるレンズです。
もちろん高価です。取り扱い店も限られております。しかしその効果は当店の沢山のお客様の感想が全てです。
内斜視に対するプリズム度数の効果により、眼鏡越しに映る輪郭線のズレが映り込みやすくなり、かつ、目の位置が少し内側に移動したように映るようになります。
眼鏡は「見えれば良い」だけではいけません。「どうしても掛けなければいけないとい」ではなく「好きだから掛けたくなる」そんなポジティブなものであって欲しいと僕たちは願っています。
プラオプが扱うブランドのラインナップはそんな願いを込めて集めたものです。
そんななかで一緒にお選びさせていただいたフレームはフランス「アン・バレンタイン」の「FANZINE」
その組み合わせがこちらです。
眼鏡を正面から見ただけでは厚みのあるレンズが入っているようには見えないと思います。
しかし上から見るとレンズの存在がわかります。
僕は横から見たときのレンズの厚みを目立たせなくする事ももちろん大事ですが、それ以上に正面から見た時に度数を感じさせない仕上がりである事を最も重要視します。
レンズの厚みを気にする本心は「近視の度数が強く感じるような素顔との大きな差」で「レンズが薄くなればそれが小さくなる」という願いから来ていると思っています。
つまり、正面から見た時に鏡に映る自分の姿の違和感。当然人に映る自分の姿は鏡に映る姿ですから、そういう容姿の違和感が眼鏡を嫌う理由で、仕方なくかけるとしたらなるべくそうならないようにしたい=「レンズが薄くなればマシになる」=「レンズが薄い方がいい」というふうに繋がっていると思うのです。
しかし、薄型のレンズを使ったとしても入る度数は一緒。鏡を見た時に映る容姿は残念ながら超薄型レンズを使っても微々たる差しかなく、本当に望んでいるような成果は得られないのが現実です。
だから僕らは眼鏡を外してジックリ見た時にわかる「レンズの厚み」ではなく「正面から見た時に度数の強さを感じさせない」事に注力しています。
実際、人は隣人の眼鏡のレンズを横から見てその厚みを気にしてなどいません。あくまで正面で向かい合い、表情の変化を見ながら会話を楽しむのです。
そして仕上がりがこちらです。
輪郭線のズレも見えず、目も小さくなっている感じがほとんどないと思います。
しかし実際には近視度数にして約-5.00 視線を曲げるプリズム度数が両眼で16.5プリズムOUTと強めに入っているのです。
全然違和感なくてすごく似合うし、しかもとても可愛いと思いませんか??
斜視の矯正は眼鏡を通して視線を正面に向けるものです。だから目は真っ正面を向いているように見えます。
そして、両眼で物を一つに見る事ができるようになりました。世界が一つに見える。そして3次元空間を感じられる。
感覚の大きな変化は当然大きな違和感を伴う事が予想されるので、お渡し時に実際に使用できる眼鏡になっているのか不安ではありましたが、M様の明るい表情を見る事ができてとても嬉しかったです。
M様には同じようなお困りを抱えている方の参考になればとブログの記事にさせていただく事を了承してくださいました。
本当にありがとうございます。
眼鏡で全てを解決する事はできません。理想的な状態に仕上がる事ができない場合も当然あります。
しかし、できる最善は尽くしたい・・・そう思うプラオプなのでした。
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