立体感を感覚として感じる仕組みは単に「手前のものは大きく、奥のものは小さい」「手前のものは早く動いて、奥のものはゆっくり動く」など、遠近法のような仕組みで感じているものとは違います。
ほんの僅かな距離や奥行き厚みなどを感じる感覚は、左右の網膜に映る映像の差を利用して生まれるのです。
距離の違いによる左右の網膜に映る映像の差
注目している物へ向かって左右の目はそれぞれ視線を向けます。
そうすると注目しているものは一つに見えるわけですが、それ以外の視界に映るものは網膜の周辺に映る事になります。
その映る位置の差を利用して目は精密な距離を測る事ができるのです。
まず下の図を見てください。視線(網膜の中心)を境に「鼻側」「耳側」と分けることができます。
そして、注視しているものよりも手前にあるものは左右の網膜のそれぞれ耳側に、奥にあるものは左右の網膜の鼻側に映る事になります。
両目ともに「耳側」に写った物は注視しているものよりも手前にあるように感じ、両目とも「鼻側」に写ったものは注視してるものよりも奥にあるように感じます。
では注視している物と同じ距離にあるものはどう映るでしょう?
注視しているものと同じ距離にあるものは、左目は耳側、右目は鼻側というように先ほどとは違うように網膜に移ります。
網膜に映る位置は左右で違っても、中心からの距離が一緒なので相殺されて距離感は注目しているものと同じ距離にあるように感じます。
でも実際は今までの説明のように前後、左右ときっちり物が並んでいるわけではありません。前後左右が複雑に網膜には写っているはずです。
前後、左右が組み合わさったら?
実際には鼻側に写った位置と耳側に写った位置の差が距離感を生みます。
このように、注視しているものは網膜の中心で見ていますが、それ以外の物はその網膜の中心から左右で映る位置に距離的な差が生じます。
この左右の網膜に映る映像の位置の差を利用して「感覚的な距離感や立体感」を感じているのです。
これはテーブルの上に落ちている髪の毛一本を立体的に感じる事ができるほど精密なもので、遠近法的な手がかりでは決して感じることはできない感覚です。
見ているものに対し、正確に状況を判断し正確に体を動かして正確な成果を得るには、この「正確な立体感」と体の動きが一致する事がとても重要です。
眼鏡は視覚の入り口にあり、視覚そのもの大きな影響を与えます。
眼鏡を合わせる時に立体感が正確に感じられているかどうか?は考慮しなければならない大切な事なのです。