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「知っている」だけでは「技術」じゃない

こんにちは!プラオプ ハセガワです。

「眼鏡は視覚の入り口にあり、視覚を整えもすれば壊す事もある」

そう考えると私たちの役割はとても責任重大です。

だから、視覚が関係するお困り事でプラオプが出来る範囲の事は今できる最高の事を、出来ない範囲の事は適切な施設をご案内する事を含めた対処法をアドバイスしなければいけません。

世界的な統計によると、眼鏡を必要とする人のうち単純な度数合わせだけではお困り事を解決できずに「両眼視」つまり両目で見ることにトラブルを抱えている人は約40%くらいになるそうです。

約10ヶ月ほどの統計を取ると、当店で「両眼視」の問題に対して何かしらの工夫をしたケースは約50%

プリズムメガネで対処した場合とトレーニングをアドバイスしたケース、その両方を必要としたケースを合わせてこんな感じです。

当店のコンセプトは「視覚を整える眼鏡店」「眼鏡のお困り専門店」ですので、来店の動機が何かお困りがあっての事が多いため、比率が多いのだと思います。

「今よりよく見えるメガネが生活で必要だけども、それが掛けられない。」

「今よりよく見えるメガネを作ろうとしても掛けられないからあまり良く見えないメガネになってしまう」

そんなお困りをよく耳にします。

正確な度数測定がなされている事ももちろんですが、多くの場合「両眼視」の問題が視界がハッキリしたとたんに現れて、その対策がなされないから視力を落としボケた視界にする事で誤魔化してしまっているケースがほとんど。しかし、近視の場合は単に度数を弱めても、近い距離はハッキリと見る事ができるので、度数を弱めて視力を下げても根本的な問題解決にはなっていはいない場合が多いようです。

逆に両眼視に問題があるのに、「よく見えるように」するため必要以上の強すぎるメガネを掛けていた方も多くいらっしゃいました。

測定が出来ても、対処法に繋がらなければ意味が無い

先日いらっしゃったK様は「視線のズレ(斜位)はあるけれど、メガネで矯正すると自分でカバーする力がおとろえてしまう」と言われたそうです。

ではK様の「いままで、メガネがなかなか合わない、良く見えない・・・疲れる・・・物が2重に見える・・・距離感がつかめない・・・・」というお悩み事への解決策は何か提示されたのでしょうか?

残念ながら何も無かったそうです。

自分でカバーする力は必要かもしれませんが、それがせめて他の方と同程度になるように助けてあげるべきなのではないでしょうか?

K様のお困りはそこに確実に存在しているのです。メガネで何も対処をしないのであれば、それに対する別の方法をなにか提示して差し上げなければ、なんの意味もありません。

K様の目には上下の視線ズレ(上下斜位)と若干外側に視線が向くズレ(外斜位)がありました。

しかもそれがずっと放置されていた為に、その疲労感から逃れようと網膜の中心でないところを中心の代わりに使うような変化を起こし、それが固定化しつつある状態でした。このような状態では視線ズレがまるで無いように見えてしまい、何処に問題解決の糸口があるのか分からない場合があるのです。

プラオプで行っている両眼視機能検査は「ポラテスト法」といわれるもので、このようなケースの斜位をあぶり出し、測定し、どれほど眼鏡で助けるべきか?を考察する事ができます。

こんな視標を使います。(ほんの一部です)

「ポラテスト法」とは単に「ポラ:偏光」という仕組みを使った検査の事をいうのではありません。

さまざまな種類の「両眼視測定用」の視標を使い、網膜の中心で見る事ができるような度数を導く測定法の事です。その目的は眼精疲労の軽減ではなく、「正確な距離感、立体感を感じる事ができるようになる事」が目的で、それが整う事によって結果、眼精疲労の軽減につながるという事なのです。

ポラテスト法はK様のように長期間放置されたことによる変化を測定する事ができます。

今回はそこから導き出したプリズム度数を組み込む遠近両用を作製する事で、人よりも沢山苦労されていた分を眼鏡に肩代わりさせます。

ポラテスト法の測定データの特徴は、その人が「自然に見ている状態で起こっている苦労を補う分」のデータが出る事。(僕の感想です。)それは意外と小さな値だったりするのですが、それが驚くような効果を発揮する事が多くあります。

この検査法において大切なのは、測定環境です。それは、必要な視標が全て揃っている事、自然な距離感のある測定環境である事、自然な照明である事、視界に余計なものが映らないこと。などなどです。

だからプラオプには小さな店なのに、6mの明るさを変えられる検査室があり、カールツアイスの視力標とオクラス社の検査枠を使うのです。

別のケースで先日のN様は「度数ゼロだけどプリズム度数が問題解決に繋がる」という検査結果だったのですが、それは単なる「右目の視力」「左目の視力」・・・という視力を上げるだけを目的とした測定では何も分からない事なのです。

見ることのご苦労が今回のような「両眼視」にあるだけではありません。十人十色です。むしろ複合的に絡み合っていると考えたほうが自然です。
だから様々な測定法を駆使し、その結果を眼鏡に、またはアドバイスにつなげるわけですが、実際に問題の解決の役に立たなければ意味はありません。

全ての方の問題を解決できるわけではありません。僕ではお力になれない事も沢山あります。失敗する事だってあります。

でも「知っている事を知っているだけでは済まさずに、形にできる事」と「知った知識を事を形に出来るようになる事」「知らない事を知るようになる事」が技術者だと思っております。

今回お作りした眼鏡が長年のご苦労を軽減し、快適な生活の助けになったなら、僕は一人の眼鏡技術者としこれ以上の喜びはありません。

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