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鏡の中の立体感

こんばんは! プラオプ ハセガワです。

鏡のお話4回目。最終回の予定です。

1回目鏡はなんで左右が反対に映るのに、上下はそのままなの?
2回目鏡と写真の違い
3回目鏡の中の距離感

鏡の中の立体感

昨日の記事の続きですが、鏡の中には奥行きがある、空間そのものを映し出しているという事でしたが。

さて、人が距離や立体感を感覚として感じる仕組みについては過去の記事を見ていただくとして・・・

立体感を感じる仕組み

両目の網膜に映る位置の差を感じ取り、それを立体的な感覚として感じるというわけです。

さて、鏡に映った景色はどうなのでしょうか?

このように、視線は鏡で反射するのですが、鏡の奥にそのまま伸びているように見えるので鏡の中でも立体感が感じられる条件が整うのです。

つまり、鏡で反射した景色にも窓の外を見たときのような正確な距離感や立体感を感じられるのです。

車のバックミラーは安全運転の為にとても大切なものですが、バックミラー越しにみえる後ろの景色も同様に、まるで窓を覗いているかのように立体的に広がっているのです。

だから、きちんと立体感を捉える事ができてさえいれば、ミラー越しに車の後ろギリギリに駐車できたり、バックでスレスレに壁に寄せたりなどができちゃったり、近づいてくる車の速度がわかるから、追い越し車線に入るタイミングがわかったりするのです。

さて、最近導入されつつあるバックミラーの代わりをする「バックモニター」

つまり、後ろをカメラで撮影しそれをモニターに映し出す仕組みですが、鏡とは決定的な違いがあります。

それは「モニターでは距離を感覚で感じる事ができない」ということです。

モニターは写真と同じです。遠くの物は小さく見えるという「絵」でいう遠近法のような手がかりで判断するしかありません。

そしてもう一つ。もっと大きな違い。

それは、「モニターを見るにはモニターにピントを合わせる」ということです。

下の写真は鏡の前に置かれた物を撮影したものです。

鏡ギリギリにおいたので、鏡の縁も一緒にピントが合っています。でも先回の記事で「鏡の自分を見るには、鏡までの距離の2倍の距離にピントが合わないと見えない」と説明したとおり、カメラを構えた僕はピンボケです。

なので、自分にピントを合わせれば・・・

はい、この通り、鏡の縁と置物にはピントが合わなくなります。

じゃあモニターに映った自分を見るとどうなるか?

さっきの置物をモニターの前に置いて、撮影した写真をモニターに映し、それを撮影してみました。

画面の中の僕も、モニターの縁も置物も全てピントが合っているように見えます。奥行き感がありません。

バックミラーで後ろの状況を見るとき、「窓越しにみた遠くと同じように見ている」のだから、ピントは遠くに合わせる事になります。

でも、バックモニターは目の前に置かれた大体1メートルくらいにピントを合わせなければならないわけです。

前を見て運転している→ミラーで後ろを確認する・・・

ピントの位置は遠くに維持したまま、瞬時に前の状態と後ろの状態を確認する事が出来るのですが・・・

前を見て運転している→モニターで後ろを確認する・・・

これではモニターを見る為に近くにピントを合わせなおさなくては見えないし、また前を見る時には遠くにピントを合わせなおさなければなりません。

・・・

年齢が増すことで眼は変化します。いわゆる「老視」

遠くが良く見えていても手元が見えにくい状態でバックモニターが見えるのでしょうか?見えたとしても瞬時にピントが合うのでしょうか?

遠近両用を使い慣れていたとしても、ルームミラーは何処にあるでしょうか?上にありませんか?

遠近両用は基本的に近くを見る部分は下にあります。これで頭上のモニターにピントが合うでしょうか?

自動運転やバック支援機能など人の能力に依存しない仕組みになれば問題無いのかもしれません。

しかし現状は「見て判断し、操作をする」事を人間がやる以上「見る」というのはとても大事な基本ですし、人の高度な「視覚」が道路上で変化し続ける状況を「空間」として認識しながら正確な操縦を繰り返して安全運転を行っているわけです。

デザインとてスッキリする、空気抵抗が減る、雨などの天候に左右されない、カメラの機能で明るく見せる事ができる・・・などのメリットがあるにしても、最も大切な「正確な後方視界(視界とは距離感も含む)」と「瞬時に見える」事がないがしろになってしまえば、コレは安全装置なのだろうか?・・・と疑問に思ってしまうのです。

車を真上から見るような映像を映し出す技術、あれは凄いですよね!駐車場にとめる時などは、真後ろが見えるのではなく、「真上からみたような」映像をたよりにギリギリまでぶつけずに駐車する事ができます。

でも、スピードが出ている運転中の後方確認は、現状は鏡でなければならない理由があるのです。

・・・

というわけで、4回にわたったこの連載はこれでおしまい!

ではでは!

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