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レンズの品質ってなんだろう⑤

こんばんは!プラオプ ハセガワです。

さて、先回は「パワーエラー」という事を書いたのですが、レンズの見え方性能は「コッチをたてたらアッチがたたず・・・」という難しいものだよ!というお話でした。

今回は「乱視レンズ」について。

眼の個性として「乱視ってなーに?」というのは前の記事を見ていただくとして、その矯正に使う「乱視レンズ」を少し掘り下げてみます。

乱視レンズとは

「乱視」というものは超簡単に言ってしまえば「眼の縦断面と横断面で度数が違う」事。

つまり縦と横で度数が異なるレンズを使わなければならないわけですが、コレが「乱視レンズ」というわけです。

「近視」や「遠視」のレンズは、ザックリ言うとピント全体を前に移動させるか?後ろに移動させるか?ということなので、乱視の矯正をしなければ単に「乱視が残ったまま」ピントが前後に移動するだけです。

乱視のレンズは断面によって度数が異なり、それを眼の丁度いい角度にセットする事で「断面による度数の差=乱視」を打ち消し、焦点が「一点」になるように働くわけです。

眼が柔らかい組織で出来ている以上、乱視は多かれ少なかれ全ての人の目にあるものです。

つまり、「近視+乱視」「遠視+乱視」というのが「普通だよ!」というわけ。

さて先回使った下の図ですが、これをもう少し詳しく解説します。

横軸が近視あるいは遠視の度数。

分かりやすく近視だけの度数にして考えてみます。

度数”0”から始まって”10.00”という度数まで作れるレンズがあったとします。レンズの度数ステップは0.25なので、0、0.25、0.5、0.75、1・・・・ようするに4x10=40+1(度数0)で41段階の度数がある事になります。

そしてこの近視一個に付き乱視の度数が0~4まで作れるとすると、乱視無し、0.25、0.5、0.75、1・・・・ようするに4x4+1(乱視無し)で17段階

例えば近視度数が1.25で乱視が1.75の場合以下のように・・・
「近視度数-1.25+乱視度数-1.75 」
という一枚のレンズを作るという事です。

そうすると「近視の度数41段×乱視の度数17段=697段」の度数をこのレンズは用意しているわけです。

上の図の長方形はその範囲を表しているのですが、ようするにその全てが最高の光学性能であってほしい・・・

この連載の最初の回で載せた下の写真はあるメーカーのあるレンズの製作できる度数、「近視+乱視」と「遠視+乱視」の全てを表しています。上の図とは立て横が逆ですけどね。

一番左の縦軸が近視の度数で横軸が乱視の度数ですが縦軸には「16.00」と、横軸には「6.00」と書いてあります・・・。途方も無い数です・・・。

乱視レンズの光学性能

乱視レンズは縦と横で度数が違う、ということは縦と横では最適な形状が違うという事です。

メガネのレンズは乱視の縦横の差を裏面に仕組みます。

表面を「非球面」化した場合どうなるか?縦と横のいずれかに最適な形の面で作っても、残った方には最適じゃない・・・という事が起こります。

これが「外面非球面設計レンズ」
(外面というのはレンズの裏表で眼から離れた方を外面、眼に近いほうを内面というからです。)

じゃあ残った方はどうしよう・・・内面も非球面にしちゃえばいいんじゃない?

ということで出来たのが「両面非球面設計レンズ」です。

つまり「両面非球面レンズ」とは「乱視のある方」に高い効果を発揮するのです。

「非球面」という「面」はとても複雑で難しい面なのですが、一旦「型」さえ用意できればポコンポコンと同じ形状を量産できます。これがつまり「モールド製法」の考えなのですが、外面だけ「非球面」の型なら用意する「型」そのものはそんなに沢山の種類ではありません。

しかし「裏面」も非球面にするとなると「非球面の型」は膨大な数になるわけです。

でも度数の違いは「表面+裏面」の組み合わせでカバーできるので、全部の度数分用意はしなくていいのです。

これが量産型両面非球面レンズの仕組みです。

しかし、縦横だけでみるわけでなく、当然斜め方向もあるわけです。そうすると全面がハッキリ見えるというレンズを作るのはもう「型」を使っては作れそうにありません・・・。

だから「フリーフォーム切削研磨法」が必要になるのです。

乱視の縦横は常に真横・垂直ではありません。眼ですからそんなピッタリできてはいませんから斜めな事も良くあります。

それに今度は上を見たときと下を向いたときに度数が変わるレンズ、ようするに「遠近両用」の場合より複雑になってきますので、レンズの1銘柄でも億を余裕で越える度数の組み合わせが必要になるのです。

しかも人の目は斜めを見たときに眼が少しねじれる方向で動きます。これを「リスティングの法則」というのですが、これをレンズに考慮したり、カールツァイスのレンズには度数を「0.01」刻みでオーダーする・・・なんてレンズもあったり、個人で変わる眼鏡の掛かり具合の差による見え方の影響まで考慮したレンズ・・・なんてものまで実用化されていたり・・・。

その次元になるともう「フリーフォーム」でなければ不可能です。

まるでそこにレンズなんか無いような自然な見え方を作ろうとした場合、考えなければいけない事は物凄く沢山あって、それをカタチに出来なければ高度な設計は絵に描いたもち。

たった一枚に見える透明な板が、それを実現する高度な技術によって生まれた複雑な形状をしている・・・と考えると、眼鏡を大切に扱わなきゃなぁ・・・と記事を書き終わったら眼鏡を洗おうと思っているハセガワでした。

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