左右の度数差が強いとメガネはダメなの?【事例紹介】
こんにちは! プラオプ ハセガワです。
さて以前、左右の度数の差が大きい目、いわゆる「がちゃめ:不同視」についての記事を連載した事がありますが、今日の事例はまさに「不同視」です。
I様は普段コンタクトレンズを使っておられるのですが、割と大きめな左右の視力差(正確には度数差)があって「メガネでの矯正は無理・・・」といわれてずーーっとコンタクトのみで生活されておられたそうです。
コンタクトは目の表面をカバーしてしまうので、目の呼吸を邪魔します。今のコンタクトは「酸素透過性」の高い素材を使っていますが、でもなんにも付けていない時に比べたらやっぱり呼吸が苦しいです。だから1日で装用できる時間は決まっていますので、目の健康を考えたら夜はちゃんと外して目を休ませなければなりません。
それに、旅行で飛行機にのったら乾燥するし・・・とか、そもそも目が乾きやすくてコンタクトが不快に感じたりとか・・・災害なんかで緊急なときなどは絶対にメガネが必要です。
コンタクトとメガネは「どっちかを選ぶ」ものではなくコンタクトユーザーにも必要なものです。
ご旅行に多く行かれるI様はやはりメガネの必要性を感じておられたそうで、今後の目の健康の為にも眼鏡がなんとかならないか?という事でした。
プラオプでお測りしたI様の度数は・・・
右:近視度数S-2.75 乱視度数C-3.50 乱視角度175度 視力:1.0
左:近視度数S-10.25 乱視度数C-1.00 乱視角度10度 視力:0.9
です。
数字だけでみれば、かなりの左右差です。
メガネをずっとかけていない、しかも大きな「不同視」・・・掛けられるでしょうか?
まず僕が見るのは「角膜」つまり目の表面だけの度数です。(乱視がある場合は縦と横の断面の度数が違うのですが、この場合は平均値)
右:45.87
左:45.37
この数字だけをみると左右で差があまり無い事が分かります。ということは左右の差の大きな原因は「眼球の大きさの差」である事が予想できます。
この場合、眼鏡の方が左右でみえる大きさに差が出ない、むしろコンタクトの方が左右で見える大きさに差が出る事が予想されます。
確かに、コンタクトの状態で右と左で見えるものの大きさを比べていただくと「左のほうが大きく見える」との答えでした。
上の完全に合わせた度数をかけていただいて左右の見える大きさを比べていただくと・・・なんと差が無いとのお答え。なので左右の映像を一つに纏める「融像」はしやすい事が分かります。
しかしI様には上下斜位(上下の視線ズレ)がありました。単に左右をハッキリさせただけではダメで、その補正も入れることで正確な精度の高い立体感を感じる事ができる事も確認できました。
この視線ズレの測定は、あの窓を覗く測定器では絶対に測れません。
なぜならば、僅かに顔が傾いたり、顔が下がったりしてレンズの中心で見る状態を維持できなければ、それが「本来の目のズレ」なのか「機械をズレて覗いているから」なのかが分からないからです。
しかも今回のような大きな度数差はほんの僅かなズレが大きな結果となってデータに現れます。
だから試験枠を、しかも正確に瞳の中心に据え付けなければならないのです。
プラオプでは、ドイツのオクラス社の試験枠を使って必ず瞳の位置を正確に合わせて測定を行います。
上下の視線ズレは、それによって測定されました。
ですが、真っ直ぐ見たときはそれでよくても、近くを見る為に下を向いたときは度数の差によって視線の高さに無視できない大きな差が生まれてしまいます。
コンタクトが両目で0.8くらいの視力でI様はそれで遠くの見えにくさはあまり感じておられなかったので、眼鏡でもそれくらいになるように度数を弱め、室内を見やすくする設定ができそうなので「中近両用」で作りました。
本当は「遠く用」と「近く用」を分けるのがベストではあるのかもしれませんが、これも大切なのは「実際にかけられるのかどうか?」であって、僕たちの眼鏡合わせの「習慣」を優先させるのは間違いです。
左右の視線ズレがあってもコンタクトでは(本来は矯正すべきだと思いますが)それを自力で補っておられる・・・
ということは、許容範囲が広い事が予想できます。これはトライすべき!
ということで今回組み込んだのは以下の通り。
レンズ:ツァイス オフィスレンズ・プラス ショート 1.74
右:近視度数S-2.75 乱視度数C-3.50 乱視角度175度 加入度数+1.75
左:近視度数S-10.25 乱視度数C-1.00 乱視角度10度 加入度数+1.75
右:2プリズムベースダウン
左:1.25プリズムベースアップ
ツァイスの中近レンズは僕が知る限り、最も度数が短い距離で変わる中近レンズ、つまり遠くから近くまでをチョット視線を変えただけで見ることが出来るレンズです。
ですが上のままで注文すると、真っ直ぐ見たときには設計上、過剰なプリズムが掛かってしまう事になるので、その分を計算してまっすぐよりも僅かに下を見たときに狙ったプリズム効果が得られるように・・・
右:プリズム無し
左:1.25プリズムベースアップ
というようにアレンジしました。
うーん今回はなんだか難しい・・・
で、出来上がりがコチラ!
フレームは「kamuro」の泡をイメージしてる「ecume」で!
I様は左右の耳の高さが違うので、また左のレンズを目に近づけたかったので「細かく調整が出来る」事も大切な条件でしたが、バッチリでした!
そして、正面から見て厚い左のレンズの下側に白い線が出ないようにバランスを考えて作りました。
ドキドキのお渡しですが・・・
狙い通りの視力と、ズレの解消、そして遠くも近くもちゃんと見える・・・しかも、ラク・・・というご感想をいただけました!
目は個性の塊です。
セオリーが全ての人に当てはまる事はありません。
数字だけを見て慣習に捕らわれては、解決策にたどり着けないばかりか逆に不具合の原因になる事だってあるのです。
お写真もいただけました!
やーん、ステキ・・・
Iさまこの度はありがとうございました!旅行、どうかお気をつけて!
「不同視」は眼鏡で矯正できる!というつもりはありません。眼鏡で矯正できる可能性を探って答えを出すべきだと思います。
ではでは!!
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