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予約枠、2時間っていったい何をするの?⑨

こんにちは! プラオプ ハセガワです。

さて長期に渡ってしまったこの連載も今日で最終回です。

(先回はこちら)

度数も決まり、レンズも決まり、フレームが決まりました。

残るはなにか?

お会計?

いえいえ、眼鏡を構成する「部品」の仕様が決まっただけで、今度はこれをどう組み立てるか?を考えなければ「完成品」が「あなたの眼鏡」にはなりません。

そのための作業とは「フィッティングとレイアウト」です。

16.フィッティング

レンズが入る前にお顔にあわせて掛け具合を調整します。

これを私たちは「フィッティング」と呼んでいますが、これ、眼鏡にレンズが組み込んである状態で行うものではありません。

出来上がった眼鏡をお渡しするときに行うのもフィッティングですが、レンズを組み込むときに最初にあわせたフィッティングが多少狂うので、それの微調整を行うものです。

なので本番のフィティングはレンズが組み込まれる前に行う事がセオリーです。

このフィッティング。

なにも掛け心地を良くする為に行うのが一番の目的ではありません。

眼鏡を光学機器として眼に効果的に作用させるため、眼とレンズの位置関係を最適に、そしてそれが持続され、なおかつ柔らかい皮膚にこの工業製品をずっと掛け続けられるような掛け心地を生み出し、かつ外観的に美しく顔に収まるようにする作業です。

人の顔は基本的に左右非対称です。そこに線を一本引くのが眼鏡です。

つまり左右の非対称性を強調し外見的に違和感を感じるように掛かってしまう原因になる事があるわけですが、その非対称性に合わせて眼鏡も非対称に調節することで外見的に違和感の感じない状態に持っていけるわけです。

その究極は「左右非対称眼鏡:レチルド」ですね!

そして、眼鏡のデザインはお顔に掛かる事が前提でデザインされているわけです。

アンバレンタインなんてお顔をキャンバスにしてデザインしてますしね!

プラオプで扱っているブランドは全部「掛ける人の事をイメージ」しています。

だから眼鏡のデザインは顔に掛かって完成で、フィッティングをして想定した位置で掛かるとフィティングしていない状態とは全く違う眼鏡に見える事は良くある事です。

その「完成したバランス」を整えるためには「レンズがあると邪魔」なんです。

工具のアクセスがわるかったり、レンズを傷つけてしまいかねません。

またプラオプはカスタマイズをしてお気に入りを諦めません。

そのためのカスタマイズはレンズが入ってしまっていて、もうお渡しをする時に出来るものではありません。

そしてフィッティングをこのタイミングでやってしまう最も大事な理由は次の工程のためにあるのです。

17.レイアウト

眼鏡の正しい位置とは「視線とレンズの位置関係が正しい」事です。

つまり「視線とレンズの位置関係を調べる」事がレイアウトです。

これとさっきのフィッティングを省略しても眼鏡は作れますし、視線とレンズの位置関係が正しくなるように眼鏡を後で調整することは出来ます。

でもそれを優先したら、いくらレンズの位置は正しくても外見的に眼鏡が傾いて掛かって見えたり、必要以上に眼鏡が高い位置に掛かったり下がって掛かったりと、身につける物の中でお顔に掛かる、しかも眼に掛かるという最も目立つ物が外見的におかしく掛かって見える事になる場合が多いわけです。

更にいえば、レンズには想定する位置があって、それに基づいて設計をされています。

眼とレンズの間の距離や横から見たときの眼鏡の傾き、そして上から見たときの眼鏡の反り具合など。

それを個人差の大きい顔に外見的に美しくバランスよく調整し、そのうえで瞳の位置(視線の通る位置)を測定し、それを元にレンズが本来の性能を出来るだけ発揮できるようにレンズの中心を決めるのです。

このレイアウトはイロイロな方法があって、僕もイロイロな方法を使い分けていますが、今の段階で最も使っているのはフィッティングが出来上がったら写真を撮らせていただいています。

何故かというと、その場ではキレイに掛かっているように見えても、時間をかけて客観的に見るとやはり曲がっているように見えたりするからです。

なので撮った写真をパソコンに取り込み、イラストレータというソフトで実際の寸法がでるように画像を拡大し、顔が傾いたりしていたらそれを修正し、場合によっては画像の上で眼鏡の位置を動かしたりして、調整が更に必要であればそれを行っています。

これは完全オーダーメイドのフレームの場合、鼻当てのアームの長さを決めたり、レンズの大きさや位置を変えたりしなければいけない場合、実際に画面で見てしかも寸法が表示されるのでとても便利です。

それで出来上がった眼鏡はほぼドンぴしゃりの仕上がりになっています。

そこで導き出した瞳の位置はとても重要で、場合によっては度数そのものを変えてしまう事があります。

肝心なのは「度数」ではなく「眼鏡に入れた度数が生む効果」なのであって、測定と装用テストで狙った効果が再現されるように、実際の眼鏡では変わってしまう条件に合わせ修正する事が必要な事があるのです。

例えば左右の度数の差が大きい遠近両用・・・

レンズメーカーによって異なるのですが、真っ直ぐ見たときの瞳の位置から2~6mm下に(厳密には違うのですが)レンズの中心が設定されています。

その場合真っ直ぐ見たときに左右の視線の高さを変えてしまう効果が生まれ、コレが見え方の質に大きく影響する場合があります。

なのでその方の用途やレンズの種類によって、なるべく視線ズレが少なくなるように視線ズレを矯正するプリズム度数が必要ないのに入れ込んだり、減らしたり、場合によっては逆に入れたりして実際に眼鏡として仕上がって、掛けたときに狙った効果が生まれるようにアレンジする事があります。

用途と掛かる位置、選んだレンズの特性、姿勢、目の動かしたかなどを考えて、撮った写真から正確な位置を出し、視線を下げたらどれくらいのズレが出るか、上げたらどれくらいのズレがでるか、最も使うだろう位置はどこか?などをパソコンを眺めながらじっくり考えるわけです。

これはフィティングが出来上がっていなければ不可能です。場合によっては鼻当ての加工などが必要であっても、できるところまでフィッティングをして、レイアウトの段階でどこをどのようにカスタマイズするか?を考えなければならないわけです。

今のレンズはとても進化していて、フィッティングでは補いきれない部分のズレやデザイン上セオリーから外れる(スポーツサングラスを度付きにするとか)場合でも、レンズ側がそのズレを補う高性能レンズがあります。
その場合専用の機器(プラオプではツァイスのi-profiler mobaileを使用しています)を使い、さらに眼鏡の掛かっている状態をデータ化し、メーカーに発注します。

長い文章になってしまいましたが、写真でレイアウトを取る場合はパシャリでおしまいなので、時間的にはフィティングを含めだいたい10分くらいだと思います。

・・・約2時間と30分ですね・・・

お困り事は人それぞれ、眼鏡を使う目的も人それぞれ、好きなデザインも人それぞれなので掛かる時間も人それぞれ。

そんなわけなのでプラオプは「予約優先」にさせていただいております。

同じ事が出来るならそれは時間は少ないほうがいいのでしょうが、今のところやっぱり2時間から2時間30分は掛かってしまいます。

9回にわたった「予約枠、2時間っていったい何をするの?」でした!

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